SNSか、FTFか

 ネット技術の発達は人類にさまざまな恩恵をもたらしています。高度な計算を驚くような速さで処理し、最近はそれらの集計によって情報を構築してゆきます。身近なところではネット通販などに代表される「あなたへのお勧め商品」などは典型で、最近では自動販売機の前に立つと「あなたへのお勧め」が示されるものもあります。これは販売機の上にカメラが設置され、そのカメラであなたの顔を認識し、性別や推定年齢等を割り出し、過去のデータに照らし合わせて何を欲しているかを推測しているのだそうです。高度なところでは遺伝子の解析やiPS細胞の研究などにも活躍し、新薬の発見や開発のスピードが格段に早くなっているとか、宇宙開発や各種機器などの制御が進み、先日日本でも打ち上げに成功したイプシロン・ロケットなどはパソコンで打ち上げることが出来るまでに至っているようです。

 そんな便利なIT・ネット技術ですが、反面悪影響も出ています。カウンセリングをやっているとよくいらっしゃるのが、IT技術者の精神的な不安定です。PCやスマートフォンなどの裏側で動いているプログラムの複雑なこと!小説や論文等々、通常の言葉(言語)にしても理解をするのになかなか難しい場合があるのに、プログラム言語は専門家ならその意味はわかるにしても大変ややこしいものです。例えば次の文章!?を見て下さい

 

<!DOCTYPE html>

<html lang="ja" dir="ltr" class="client-nojs">

<head>

<meta charset="UTF-8" /><title>イプシロンロケット - Wikipedia</title>

<meta name="generator" content="MediaWiki 1.22wmf22" />

<link rel="alternate" type="application/x-wiki" title="編集" href="/w/index.php?

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83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88&amp;action=edit" />

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 これが皆さんもよくお使いになっているでしょう「ウィキペディア」のほんの数行です。わかる人にはわかるのでしょうが、基本的には人間的ではありません。毎日時間に追われ、こんな画面を見ていれば精神不安定になるのも理解できます。またネットは犯罪面にも深く影を落としています。記憶にも新しい「高校生ストーカー殺害事件」。知り合ったきっかけはネットです。社会問題になっている児童売春(買春)や連れ去りなどもネットの介在によって容易になっています。そして最近では新しい問題が浮上しています。それが「ネット依存」です。まだ正式に「病気」として認定されているわけではありませんが、「依存症状」を表すことが知られてきました。つまり、あまりにもネットに費やす時間が増えてくると、ネットから離れると「イライラする。疎外感を感じ不安になる。短気になる」等々です。これらの症状は薬物依存やアルコール中毒と似たような症状だといわれています。先日、厚生労働省によって全国264校の中学・高校にアンケートを行い、その結果、ネット依存の疑いがある子どもが、中学生の6%、高校生の9%に上ることが判明したそうです。6、9%が多いのか少ないのかわかりにくいでしょうが、推計人数でいえば、51万8千人にも上るというのです。このネット依存には明確な判断基準はまだないようですが、おおむね「日常生活に支障が出るほど、インターネットから離れられない状態のことで、睡眠時間を削ってネットに時間を割いたり、食事中もスマートフォンが手放せない、パソコンに夢中で部屋から出てこられない、など。就寝中も布団をかぶって、隠れてスマートフォンを使うという状態。」何故そうなるかといえば、もっとも挙げられるのがオンライン・ゲームやSNS等からくる「仲間からの疎外感」だそうです。ネット上では利用中には結びつきは強くなった気がしていますが、離れている間には「何かうわさをされていないか?情報に遅れていないか?」等々の疎外感が襲ってくるというものです。このSNSというのは「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」。知らない人(勿論知っている人も含まれますが)同士がネット上で「双方向」に交流できるシステムです。最近の有名なところでは「ツイッター」「LINE」「フェイスブック」などがあります。これらの効果は絶大で、誰でも情報発信者になれますし、2011年の大震災時にも、いち早く必要な情報を発信し、それを受けた人たちが情報を拡散し、有効な対策にも人命救助にも役立ちました。素敵なレストランやそれらの情報はすぐに得ることが出来ますし、プロモーションにも効果的です。このようにさまざまな有効な利用方法があります。しかしながら反面前述したような反作用も多く起きていることも事実です。あらゆる技術や手法に善悪両方の作用があることは当然です。それらはすべて利用する「人間」の問題でしょう。

 前号のコラムにも書いたところですが、最近は私のコラムに「デジタル批判」のようなものがあるようにお感じになる方も多いことでしょう。実はそうではありません。何故最近私がデジタル技術のことを多く取り上げているかといえば、それは「デジタル批判」ではなく、「バランスの欠如」が危惧されるからなのです。私も多くのデジタル機器を利用しています。携帯電話を筆頭に、タブレット、PC、音楽プレイヤー等々、身の回りはデジタルでいっぱいです。ですが当然のごとく、チャネリングやヒーリングを行うときには一切のデジタル機器は必要ありません。「素の生物」としての感性がものをいいます。私が今感じているデジタルへの危機感はこの部分です。人間が機械に依存して生活する時間があまりにも長くなり、「素の生物としての感性を磨く時間」が失われてゆくと感覚が狂ってきます。能力というのは磨かないと錆びてゆくものです。思いやりの欠如、判断力の欠如、感性の欠如…このような弊害が出始めています。これは本当は、今に始まったことではありません。機械文明が始まった時から起こり始めたことなのですが、最近、デジタルの発達によって、その依存がさらに加速度的に早まってきていることを感じています。

 かつて企業が本社機能を大都市一極集中から地方にも分散させた時期がありました。その時もファックスやテレビ会議など、新しいビジネス機器が出始めた頃でした。しかしながらやがて本社機能は一箇所に戻ってしまいました。その理由は何か。「トップ同士が顔を合わせて会談しないとビジネスが進まない」というものでした。近くにいたほうが便利!ということです。最近ではビジネス・ジェットなどの発達もあり、物理的距離の遠近はあまり関係なくなってきましたが、トップ同士が「顔を合わせる」ということには変わりがないようです。今回の「お題」の「SNSか、FTFか」の「FTF]とはまさにこれ!「フェイス・トゥー・フェイス」です。本当は「SNSとFTFのバランス!」ということが申し上げたいことです。皆さん、コミュニケーションはバランスよく取ってください。電話、メール、手紙、SNS…そして「人と会って相手を感じる」。これが少なくなってくると、人間としての感性が低下してしまいます。ネット依存症も怖いですが、「素の人間としての感性がなくなること」はもっと怖いのです。