こんな「未来」はどうですか?(全編)

 「展開」の年もあっという間に半年が過ぎてしまいました。

 ここのところ世界中で、きな臭い出来事が相次いでいます。日本の高度成長時代、「21世紀は科学の発展とともに夢の時代になる」と多くの人々が夢見ていました。しかし現実は、新しい世紀の幕開けと共に9・11という想像を絶するテロ事件で始まり、世界中で国家が崩壊し、強いはずであったアメリカはかつての輝きを急速に失おうとしています。それに呼応するように中国などの新興勢力は今までとは違った形で、ちょっと強引とも思える主張を始めています。世界中が新しい流れの中でもがき、変化に戸惑っているように感じます。

 この、世界の不調和・不協和音を感じる時思うことは、その根底にコミュニケーションの不足、理解の不足があるということです。日本の行く末を決定づける国会議員の討論の場、「議会」において皆さんはさまざまな方策が充分議論されていると感じますか。3・11災害による被災者救済・・・勿論すべてを国家でまかなうのは無理かもしれませんが、それ以上に個人の力では対抗することは出来ない事態です。その対処は?国家という集団は互助救済のための集まりではないでしょうか。議員と官僚という職業を提供するためにあるのではありません。

 世界でも紛争のにおいが強く漂い始めています。その解決は結局、武力なのでしょうか。外交という対話の弱さを感じてしまいます。各国首脳は本当に紛争を解決するという気概があるのでしょうか。首脳会談の「時間」が雄弁に物語ります。「何々サミットで両国首脳は一時間という長きに渡り会談を行った」「廊下ですれ違った両首脳は5分間の立ち話により友好を深めた…」こんな記事をよく目にします。一時間で納得行く議論が出来ますか。5分で友好の情が芽生えるでしょうか。とても無理でしょう。首脳陣は大変多忙です。それは理解できます。それならいっその事、各国元首は国際関係改善に専念することとし、内政は各担当大臣に任せるように政治の仕組みを変えてしまえばどうでしょう。これで首脳は他国との友好関係構築のみに力を注げます。きっとじっくりコミュニケーションをとる時間ができるでしょう。

 でも「そんなことはとても無理!」ほとんどの方はそう思うことでしょう。でもこれは「気持ちを変えれば」実現は可能です。しかし、その根本には「世界を安定させる」という共通した考えがなくては不可能です。この「共通した考え」が難しいのですが、「人間の生活において何が大切か」を考える。枝葉末節ではなく「根本は何か」を考えることによって見えてくるものがあります。

 

こんな未来はどうですか?

 

 昨今は日本でも大分デフレからの脱却が始まり、若者の就職も少しは上向いてきたようです。反面、貧富の差はますます広がりを見せています。これは国家間でも同様で、富む国とそうでない国の差はますます広がっているようです。基本的に資本主義経済は「弱肉強食」であり、自然界においてもこれは摂理でもありますが、人間が人間である所以は、本能を理性で超えて行くところ、いろいろなことを創造するところにあります。折角人間に生まれてきたのですから、新しい価値観を創造してみるのも必要なことでしょう。

 

『204X年、話し合いの結果、世界の行政は統一され、経済政策は「世界経済安定局」が一括してコントロールすることになりました。その世界経済安定局は各自治地域(旧国家)に新しい経済法を発令し、実施されています。それは「国内消費法」という新しい経済の法律です。これは、それまでのグローバル経済といわれた2000年頃から流行始めた経済が、破綻したためにその反省の上に立ち、考え出された経済システムです。一時期世界を席巻したグローバル経済は、いくつかの問題を引き起こし破綻しました。まず第一に起こったことは、各国の「技術の空洞化」でした。先進国といわれた国々は、自国の労働賃金が高騰し、また熾烈な競争のためにコスト・カットを強いられ、賃金の安い開発途上国に労働力を求めるようになりました。最初は良かったのですが、各国とも需給関係はすぐに崩れ、労働争議が頻発し、世界中で賃金の高騰が始まりました。どこの国に進出しても同じことの繰り返しとなり、結果、労働力の確保が難しくなりましたが、時すでに遅く、自国には技術の継承はなくなってしまいました。技術を開発する研究者ばかりが増え、それを実現する技術者の不足という難題に世界は陥ってしまいました。つまり「頭でっかち世界」となってしまったのです。

 また別の問題も起こりました。世界中の「物」がグローバルに乱入することによって、その国独自に育まれていた製品が飲み込まれ、同じような製品が世界に溢れてしまい、結果、「選ぶ」という楽しみを人々は無くしてしまったのです。

そしてもう一つ。グローバル経済の最大の問題点が、「イングリッシュ・スタンダード」とも言われる言葉の問題でした。「グローバル経済に後れを取るな」という号令の元、多くの企業が企業内公用語に英語を採用しました。その結果、英語思考が定着し、思考が均一化し、それぞれの国の言語は衰退の一途。日本語の細やかな表現を理解する若者は居なくなり、世界の国々でも同じような現象が起こり、経済のために「文化」が失われてしまったのです。そしてその他にも諸々の問題が勃発し、世界財閥が誕生し、貧富の差はますます増大してゆきました。最終的には数少ない巨大企業が製品価格を調整し、勝ち残った企業にはおごりが蔓延し、製品の品質低下が起こり、経済は混迷を極めました。

 この歴史の反省を踏まえ、施行された「国内消費法」は原則的に製品は自国内でしか販売を認めない、というものです。無理な競争を避け、企業規模は決して大きくはならないが、その自治地域で出来る個性的な製品を開発するということに重きをおきました。原則的に自国で食べる食料は自国で作る。自分達の着るものは自分たちの土地で出来た繊維を使う。輸出入は認めるが、対象は「自国では作れないもの」に限る。

 この法律でも地域風土の違いによってGDP規模に差は出てしまいますが、各国民からは不満が出ずに、それぞれの地域が個性溢れる、その地域にしか作れない製品を創造し、人々は誇りを持って仕事をしているということです。』

 

少子化対策

 

  日本人口が一年間で約20万人強減少してしまったようです。2050年には人口1億人を割り込んでしまうという内閣府の予想があります。人口は決して増え続けることが望ましいとはいえません。地球そのものが人類を育める環境にも限度があるからですが、この限度を人間が知ることはできません。ですから故意の人口調整は出来ませんが、社会や金銭的都合で子供が育めないのはある種の社会的不幸だといえるでしょう。

 

『201X年、日本政府は働き方の全面的な見直しを進めました。省電力で効率の良い新型ファイバーの発明によって、IT環境はそれまでとは比べ物にならないほどの進化を遂げ、営業などの特別職を除き、在宅勤務が圧倒的に便利になりました。それを受け、労働基準法が改正され、フレックス在宅勤務が義務付けられました。この適用に男女の区別はなく、子育てに参加する男性は増加、また女性も妊娠中も出産後も変わりなく仕事を推進することができるようになりました。意思疎通を図るテレビ会議もストレスなく実施され、世界中とも「時差」の問題だけとなりました。この時代には働く時間も自分で自由にコントロール出来、規定の仕事をこなしていれば何の不都合もありません。ただ一つ、自己管理だけはしなくてはならないのが問題といえば問題でしょう。

  今後、新しく施行される「会社環境改善法」によって空いたオフィス・スペースは起業家達に安価に提供されることとなり、また緑化やカフェ化され、コミュニケーションのために訪れる社員達の交流スペース兼打ち合わせ場となり、それでも不必要となったオフィス・ビルは積極的に取り壊され、公園、アートスペース等文化的目的の場に改善されて行く予定になっています。…そして十年後、日本国内にはたくさんの子供達の笑い声が響くようになりました。』

 

 世界紛争に備える

 

 今、国会ではとても大変な法案の議論が進められています。それは「集団的自衛権行使」の問題です。これにはさまざまな意見があるでしょう。現在の世界状況にあって、避けて通れない課題でもあるかも知れません。多くの人々が、「関心は持っているが良くわからない」というのが本音でしょう。しかし、これはあまり積極的に語られませんが、確実に言えることは、紛争や戦争に発展した場合、最前線にいる自衛官は死に直面するという事実です。これを国民は覚悟する必要があります。物事の根本には真理があるのです。何事も根本を考えずして結論はあり得ません。

 

『202X年、新たに発足した本田内閣は、歴史的な決断をした。2014年に安倍内閣が決議した集団的自衛権行使容認を取り下げ、日本国を「不戦の国」として宣言し、すべての軍備を永久に放棄したのです。これには当然、猛烈な反対論がありました。曰く、「他国からの侵略に指をこまねいて死ねというのか」云々。しかし日本国民は選んだのです。「日本は絶対に戦争はしない」と。

  そこには重大な決意がありました。「もし他国から攻められたら死を覚悟する。世界にこのような決意をした国があっても良い」世界初の決意です。本田内閣はこの国民の決意を元にありとあらゆる外交努力を重ねています。そしてその努力と国民の決意が世界から認められ、未だ日本を攻撃してくる国はありません。』

 

  さて、このような未来が良いか悪いかはそれぞれの考え方に委ねましょう。いろいろな意見があると思います。それが大切なことなのです。いろいろなことを考え、悩み、根本を見つめることが重要です。皆様もさまざまな未来を創造し、考えてみて下さい。