カリフォルニア通信:海外の若者からの現地レポート


最終回 アメリカ、学生の就職事情

取材協力:

菊地大輝(カリフォルニア大学バークレー校応用数学科。Class of 2022。メンサ会員)

塚本皓太(カリフォルニア大学ロサンジェルス校言語学科。Class of 2022)

小濱梨眞子(カリフォルニア大学ロサンジェルス校国際開発学科。Class of 2022)

 この号が発行される頃には、日本の桜も満開でしょうか。「日本の桜が懐かしい」と言いたいところですが、一昨年から昨年にかけて、ちょうど大学3年生の一年間、コロナ禍で日本に足止めされ、オンラインによる授業となり、これには大変悔しい思いをしました。友人の中にはそのまま休学してしまった者もいて、多くの学生にとっても貴重な月日と経験が失われてしまいました。

 こちらカリフォルニアでもコロナ禍はまだまだ続いていますが、マスク規制も店舗などのワクチン接種規制も緩和され、日常生活が少しずつ戻り始めています。

 この季節、日本では「就職」の時期で、新入社員の姿が街中に見られるのではないでしょうか。

 今回は友人にも協力してもらいながら、アメリカの「就職事情」について少しお話ししたいと思います。

 

就職の季節

 

 日本の四月は「就職の季節」と書きましたが、アメリカではこの季節が意識されることはあまりありません。そもそも「新年度」という考え方がなく、学校の始まりが日本とは違い9月ですから、当然卒業も日本とは時期がズレていて、多くの学校が5~6月に卒業式を行います。ですから大学4年の春休みは、まだまだセメスター(学期)の途中ということになります。そして何より、こちらでは就職するに当たって、「新卒」という意識があまりありませんから、学生が一斉に社会に出るという景色が見られません

 もちろん、こちらでも大学を卒業してすぐ仕事に就くのは基本的には当然ですから、「新卒」はあるにはあるのですが企業からの募集は常にありますので、「新卒」「中途採用」という意識がほとんどないのです。

 

日本とアメリカ、採用形式の違い

 

 これはこちらの会社側の採用方式が主な理由となっています。

 日本では、春に新卒者を大量雇用するのが普通でしょう。そして「中途採用」は特に必要な時か、よほど優秀な人材であるか……という時くらいにしか行わないのではないでしょうか。アメリカでは事情がまったく違い、通年で常に「必要な、そして優秀な人材を募集している」という感じです。ですから「中途採用」という意識がありません。どちらが良い、悪いということはありませんが、全く就職のシステムが違います。

 

 それでは「就活」というものはどうでしょうか。日本では最近「100社受けたが全部だめ、人格を否定されているようだ!」「お祈りメールばかりで心が折れる」というような話を聞きますが、これはこちらでも似たようなもので、なかなか就職は厳しいです。アメリカには「お祈りメール」はありませんが、内定以外はほとんど連絡もなしです

 

 こちらでも、卒業が近くなると少なくとも10社以上はアプライ(応募)するようですが、その応募内容は日本とは随分と違っています。基本的にアメリカでは「会社に就職する」というより、希望する「職種に就く」という感じで、学生は自分の勉強してきた学業に合った仕事に就こうとします。というより、前回のインタビューでもお話ししたように、「希望の仕事に就くために、大学の学部を選ぶ」という傾向です。そして大きく違うのが、日本のように「会社に入れてください」というものではなく、「私はこういう人間だから、私を雇った方が得ですよ!」というアピールになります。会社側も「これこれこのような人材が欲しい」と募集していますので、このような積極的で強気な応募になります。

 

 現在のアメリカでも就職はなかなか難しく、比較的「理系」の技術を持っている者(IT関係やデータ分析、機械工学などなど)は就職しやすく、多くの「文系」の学生は一年入学時からインターンに走り回ります。

 それは企業から求められる要件の一つに「職歴」があるからで、「学生なのに職歴?」と思うかもしれませんが、こちらの企業は基本的に「即戦力」を求めていますので、それが応募条件の一つとなっていて重要視されます。その為、大学でも学生への就職支援は充実しています。

 

 日本の大学にも「就職課」があると思いますが、こちらの就職課(キャリア・センター)はかなり内容が濃く、カウンセリングで分析などをして、性格などを把握し、向いている職種なども指導してくれます。また、多くの学校でキャリア・クラスという授業を取ることができ、そこでは自己分析や応募に必要なレジュメ(履歴書)、カバー・レター(自己PRを書いたもの)の書き方なども詳しく指導されます。日本の場合、エントリー・シートは、各会社に合わせて書くようですが、こちらでは原則、レジュメとカバー・レターをいろいろな会社に送り、積極的に自分をアピールします。

 

アメリカでは自己アピールが大切

 

 仕事の仕方にも違いがあるようで、日本の新入社員の場合、最初のころは、上司から仕事を与えられることが多いと思いますが、アメリカの会社では「即戦力」が基本ですから、自分から積極的に仕事をし、アピールする人が多いと聞きます。

 もう一つの、日本とアメリカの学生の違いは、アメリカでは就職をする場合、「大企業で安定」という考えはあまりなく、大企業であるかどうかというより、「自分の求める職種か、そして給料の額が高いかどうか」を意識しているようです。勿論、研究者として学問を追求するという学生もいますが、「希望の職種に就き、より良い収入を得るために大学で一生懸命勉強する」というイメージです。それだけ大学での勉強と仕事が直結しているということでしょう。

 これは「日本とアメリカどちらが良いか」という問題ではなく、社会構造や法律、そして民族性の違いでしょう。日本では一度雇用するとなかなか解雇することは難しいようですが、こちらでは、契約は一年ごとがほとんどで、解雇も「一言」のようです。そんな「社会状況の違い」で学生の勉強の仕方まで変わるのですから、文化の違いは興味深いです

 

それぞれの文化の違いを理解する必要性

 

 留学して最も感じたのが「文化の違い」「考え方の違い」です。これは日本社会の良い点や弱点、世界の状況を考えるのに大変役立っています。

 今、ロシアとウクライナで戦闘が行われています。アメリカ(カリフォルニア)の学生は、この事態をどのように感じているのでしょうか。

 

 UCバークレーはもともとリベラル色の強い学校で、ベトナム戦争の反戦運動が盛り上がり、リードしたという歴史があります。今でもその校風はあるのだと思いますが、学内は比較的静かです。今回の戦争は、アメリカが直接的には参加していないので反応は冷静です。これはUCLAも同じような感覚のようです。社会的には、こちらでもガソリン価格などは異常に高騰していますが、「今は仕方がない。我慢しよう」という雰囲気があります。

 

 しかし、SNS上では活発に意見が交わされてはいます。反戦運動も形が変わっているのだと思います。

 ただ最近の意識として、「関心の中心は母国の出来事」という傾向はあるように感じます。そして「戦争はセンシティブな問題」と考える人も多いようで、人権問題や人種差別などにも発展してゆく可能性があるため、「あえて触れない」という雰囲気もあるようです。

 

 今回は「就職」を中心に学生の生活をご紹介しましたが、社会の違いを知ることは、相互理解をする上でも、とても大切だと感じています。(2022年学報4月号掲載)


第二回 学生インタビュー

インタビュー協力:

菊地大輝(カリフォルニア大学バークレー校応用数学科。Class of 2022。メンサ会員)

塚本皓太(カリフォルニア大学ロサンジェルス校言語学科。Class of 2022。)

 最近、日本の学生が海外に出ようとしない……こんなことが言われて久しくなります。しかしながら、外に出なくても全てが完結できる日本と言う社会は大変恵まれている社会なのかも知れません。ではアメリカの学生生活はどのような感じなのでしょうか。今回はオンライン・インタビューで、アメリカに留学中の学生さんにお話しを聞いてみることにいたしました。

 「カリフォルニア通信」第二弾!

 

編集部(以下、編):今日は宜しくお願いします。早速ですが、お話しを聞かせていただきます。よく、アメリカの大学は日本と違って「入りやすくて卒業しにくい」と言われますが、本当のところはどうなのでしょう。本当に入学しやすのですか。

 

塚本皓太(以下、コータ):入学しやすいかどうかと言うよりシステムの違いですね。基本的に「入学試験」というものがありません。ですから入学申請をするためにいくつかの条件をクリアして、それを大学側が審査して合格が決まります。日本は、どちらかというと「学力」が最重要視されるイメージですが、こちらでは「人間性」をかなり重視されます。

 

菊地大輝(以下、大輝):希望する学部によって結構大きな違いはあります。基本的には、こちらでも勿論「学力」は大切ですが、人間評価のための「エッセイ」が結構な割合を占めます。入学申請には重要度順にGPA(編註1)が50%、エッセイが30%、その他が20%という感じです。エッセイは「何で、この学校を選んだか」「どんな生き方をしてきたか?」「あなたはどんな人か?」など、個人的な考え方を決められた文字数で表現します。これは結構大変です。「その他」というのは、主にいままでやって来たボランティアなどの社会貢献やクラブなどの課外活動歴を問われます。これらを11月頃提出し、希望する学校の教授が審査をし、合格が決まるのが大体翌年4月。約半年かけて入学審査が行われます。日本が受験後2~3日で大体合否を振り分けられるのとは大きく違います。

 

コータ:だから、日々の積み重ねが大切です。反面、一発勝負の入試はないから受験勉強的なものははとんどないです。GPAは今までの成績の平均ですから。

 

編:ということは、今までの積み重ねが大切で、決して「入りやすい」とも言えないですね。

 

大輝:あくまでシステムの違い。そのシステムをよく理解していないとスタートラインに立てなくなります。基本的には日本の高校を卒業してアメリカの学部に入るやり方と、高校卒業後に一旦アメリカの2年制コミュニティーカレッジ(編註2)に入って、大学の専門課程に編入するという二つの入り方が一般的ですが、日本人留学生にとっては圧倒的に後者の方が入りやすいかも知れません。

 

編:それでは卒業はどうなのでしょう。相当難しいのですか。

 

大輝:これもシステムと、それに就職に関する考え方の違いが大きく関わっていると思います。アメリカの就職の場合、大学で専攻した内容が非常に問われます。大学での知識と就職が直結しています。学生の目標が卒業することではなく、より良い就職であることが多いですから、必然的に学業に熱心になります。将来に関わりますから。

 

コータ:やはり学部によっても違いますが、3~4年次の応用クラス(専門課程)はクリアが大変です。基本的に大講堂で授業をすることなどはなく、クラスは少人数で、内容はかなり深堀されます。

 

大輝:レポートははっきり言って多いと思います。その他に私の学科では、ほぼ週に一度はクイズ(小テスト)があります。また教授と学生は対等という感覚があって、教授は生徒を伸ばす気持ちが強く、学生も徹底的に食らいつく傾向が感じられます。

 

コータ:私の学科でもエッセイはよく書かされます。エッセイによって自己分析をし、自分を深堀するのですが、総じて日本人はこれが苦手かも知れません。これは良い勉強になります。成績100%のうち、エッセイやリサーチ・ペーパーなどの課題が 40%位を占めます。そして盗用(コピペ)などには大変厳しく、提出するときにAIでチェックされたり、細かい基準が決められています。

 

大輝:言ってしまえば「アメリカの大学が特に卒業が難しい」というわけではないと思います。社会のシステムの違いからくる専門性に対する考え方の違いだと思います。

 

 

編:お話しを聞いていると、日本で言われていることとはちょっと違う感じですね。やはり社会のシステムの違いなんですね。面白いです。では次に、学生の生活について教えてください。今までのお話しを聞くと「勉強漬け」の日々という感じもしないでもないですが、どんな学生生活なのでしょう。

 

大輝:一言で言えば「Work hard, Play hard」。平日はほとんど勉強。週末は徹底的に遊ぶ! 試験前などは別ですが(笑)。ライブラリー(図書館)は 時間開放されてます。バークレーは結構田舎町ですから遊ぶところが少ないので、週末は誰かの家に集まって騒ぐことが多い。アメリカ人のホーム・パーティー好きがわかります。でもこれが結構「コネ作り」になっている。

 

コータ:これはLA(ロサンゼルス)も同じ。まず週末は勉強しません。LAは遊ぶところも多いから(笑)、結構いろいろなところに出かけます。集中と切り替えが大切だと思います。これは学ばされるところですかね。

 

編:切り替えが大切ですか……。見習う必要がありますね。勉強するにも遊ぶにも緊張感がありそうです。先ほどもお話しに出ましたが、就職に対する考え方はどんな感じのでしょうか。

 

コータ:そもそも「新卒採用」という考え方がほとんどないので、会社側も「必要な時に、必要な人材を採用する」という感覚が強いです。ですからさっきも話に出ましたが、自分の強みを高めるために、勉強に励みますね。特に最近アメリカでは「STEM」という考え方が出てきています。これは、「Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)」の頭文字を取った造語で、主に理工系の知識を統合的に学ぶ教育をすすめています。(編註:米国において戦略的に科学技術人材を育成しようと始まったもので、オバマ元大統領が演説で取り上げるなど、米国では重要な国家戦略のひとつとなっています)。このようなこともあって、今、アメリカでは圧倒的に理系学生の就職が有利になっています。

 

大輝:社会的にも「学生は勉強に集中しろ!」という風潮があって、「専門性を高めなさい」という感覚でしょうか。だから学生の方も、大学で学んだことを活かせる職業に就きたい、または希望の(年収の高い!?)職種・仕事に就くためにかなり勉強はハードにする傾向にあります。学問と会社が直結している印象です。そんな社会ですから、就職に立ち向かう学生も会社も相手に対する要望がはっきりしていて、「今、会社は○○な人材を欲している。だから君は会社に対してそれに答えられるか? 何が出来るのか?」と聞いてくる。そして学生も「何でもやりますから雇って下さい」ではなく、「○○が出来るから、そちらの会社の役に立てます!」的な言い方をすることが多いです。日本ではあまり考えられないでしょうかね。

 

コータ:さっきお話した「STEM」もあり、特に理系学生にはそうした傾向がありますね。「何を学んできたか」、「それをどう応用出来るか」、「即戦力になるか」が厳しく問われます。今はアメリカでも文系学生には厳しい社会かも知れません。そうは言っても、経営学や法学を修めるのはエリートですけど(笑)。

 

大輝:でもまあ、これは就職を考えた時のことで、前回もお話ししたんですけど、アメリカは「学び直し」には寛容で、キャンパスにはさまざまな年齢の人が学んでいます。これは日本ではあまり見かけない光景かも知れません。それも「仕事のステップアップのため」という事情もありますが、「人生の豊さのために学ぶ」という人も少なくありません。

 

編:最近、日本では「就社」という言葉があり、日本人は「職に就く」のではなく「会社に就く」感覚があるのではないか……という議論があり、学校での学びについても議論になっています。やはり就職においても考え方が全然違うようで勉強になりました。さて、時間も押してきましたので、最後に、「あなたがアメリカで学んで得たものは何か?」をお聞きしてみたいと思います。

 

大輝:う~ん、難しい(笑)。先ほども出てきましたが、アメリカの学生の自分を売り込む積極性。そのために学業に入れ込むパワー。自分の弱点でもありました。それからオン・オフの切り替え。どんなに忙しくても遊ぶ時間を創り出すバイタリティー。また、コミュニケーションの大切さです。パーティーでも常に同じようなメンバーと集まるのではなく、毎回、ほぼ確実に新しい人と出会え、彼らは人脈を築きます。大学院に行くときや就職の時にも教授の推薦や人脈が役立ちます。これは日本でも同じでしょうけれど、人同士の「つながり」の大切さを皆が実感し、大切にしています。これらを肌で感じ、学びました。

 

コータ:僕は日本の大学を目指していたこともあるのでわかるんですが、日本では「自分のコミュニティーで固まる」傾向が感じられます。つまり、同じ価値観、考え方で固まってしまう傾向です。同じ民族の集まりですし、留学生と接することも少ないので、仕方ないのでしょうが、こちらでは本当にいろいろな国の学生がいて、授業中でもさまざまな視点から意見が出されます。多面的な視点、多様性を身をもって感じられます。これは貴重な体験でした。実はイギリスにも6年ほど住んでいたのですが、アメリカとイギリスはまた感覚が違いました。国はどこであれ、日本以外でのいろいろな経験は人生に役に立つと思います。

 

編:社会構造の違いや感覚の違いが少しわかったような気がします。本当にありがとうございます。読者の中にも海外留学を考えてみようかな……と思った方、意見を聞いて、「日本の方がいいな」と思った方など、さまざまな感想があると思います。少しでも現地の生の感覚が伝わったなら幸いです。(2022年学報1月号掲載)

 

 

編註1:GPA(Grade Point Average)=各科目の成績から特定の方式によって算出された学生の成績評価値のこと、あるいはその成績評価方式のことをいう。米国の大学や高校などで一般的に使われており、留学の際など学力を測る指標となる。

 

編註2:米国においては主に二年制で、高等教育にあたり、教養科目や専門基礎などを学ぶ大学進学準備課程や、4年制大学への編入を前提としたアカデミックコース、4年制大学の1・2年次の進学を予定する予備コース(プレパレーションプログラム)など、4年制大学への準備期間として用いられる事もある(双方ともWikipediaから抜粋)。


第一回(寄稿:菊地大輝)

菊地大輝:カリフォルニア大学バークレー校応用数学科2022卒業(寄稿時在学中)。メンサ会員。
菊地大輝:カリフォルニア大学バークレー校応用数学科2022卒業(寄稿時在学中)。メンサ会員。

 今日もカリフォルニアは抜けるような青空です。

 アメリカに留学して早や4年が過ぎましたが、未だに新しい発見がいっぱいの毎日です。今回は学生の目で見た、カリフォルニア社会の現状や学生の生活などをお届けしたいと思います。

 

コロナ・ウイルスの影響

 

 東京ではそろそろ緊急事態宣言も解除される頃でしょうか。昨年から授業をオンライン化していたこちらの大学も、秋の新学期からは対面授業が始まりました。

 

 ここはアメリカ・カリフォルニア州のバークレー市という、サンフランシスコ郊外の学生街ですが、こちらの雰囲気と言えば、すでに「ほぼコロナを気にしていない!」という感じです。

 普通にパーティーは開かれ、スポーツ・イベントも開催されています。レストランも多少時短営業はあるようですが開店していて、そこそこ賑わっています。

 マスクをしている人もそんなに多くはありません。基本的には店内、授業中など屋内はマスクを着用することが推奨されてはいますが、屋外ではほぼほぼノー・マスクです。

  そんな雰囲気なのですが、日本でも「ワクチン・パスポート」のようなものが検討されているようですが、こちらでは学食や学内ジムなどの人が集まるところではワクチン接種済証明書やPCR陰性証明の提示が義務づけられています。

 学内にはPCRの無料検査施設があり、教授や学生などはいつでも検査が受けられ、体調不良を感じると、個々人が積極的に検査を受けています。やはりこういうところにも「自己責任」が浸透していることがわかりますね。

 

日本とアメリカ、学生気質の違い

 

 この街には、多くの学校や研究施設があります。

 その中でも最大のものがカリフォルニア大学バークレー校で、大学院生を含め三万人を超える学生が学んでいます。

 そんな関係で、街には学生が溢れ、活気のある場所となっています。カフェにはPCを広げ課題をこなす学生や、さまざまな社会問題を議論する学生がいて、街の風物詩となっています。

 

 アメリカに来て特に感じるのは、こちらの学生は、とにかく「よく勉強する」ということ。そして何事にも「積極的である」ということです。出される課題の量もハンパではありません。

 その理由は、アメリカの学生が特に勤勉というわけではなく、社会状況、主に就職事情によるところが大きいようです。

 日本でも最近は多少変わってきているかと思いますが、基本、大学は「肩書」であり、就職は如何に会社に合わせ、そこに馴染んで仕事をして行くか……という印象が強いですが、こちらでは、学校で「何を学んで来たか」、そして「何が出来るか」が問われます

 そのために在学中からスキルを上げることが重要で、とにかく一所懸命勉強をするのです。

 

 また「学び直し」の機会も多く、一度就職した後、「自分には何々が足りない」という理由で、再度、大学や大学院に入り直す人も多いので、キャンパスにはいろいろな年齢の人が少なからずいます。これも日本と違うところでしょうか。これは、どちらが良いか悪いかということよりも、「社会構造」の違いなのかと思います。

 それでも「がり勉」なのかというとそうではなく、平日はがっちり勉強、週末はがっつり遊ぶ……という感じです。メリハリがはっきりしているのが、ここの学生の特徴です。

 

アメリカから見た日本社会

 

 もう一つ、こちらの学生の特徴をあげるとすれば、それは「グローバルな感覚」でしょうか。

 基本的に日本は単一民族の社会ですので、社会全体の価値観は似たようなものですが、アメリカは多民族国家のため文化も価値観も多様です。そんな社会の中にいれば、自ずと違う価値観を受け入れ、グローバルな感覚で社会を見るようになります。

 日本の教育は小さいころから「平等」であることを教えられ、同じ価値観の民族の中で育ちます。これは良くも悪くも日本の教育の特徴に感じられます。しかし敢えていうなら、大学における勉強は、「それでは問題なのかも知れない」と感じるようになりました。

 

 アメリカで暮らし、学んでいると、こちらの社会は、完全な「能力主義」であるということを肌で感じます。

 そして世界の中では、これが「スタンダード」なのではないかということです。

 

 反面、日本の良さも見えてきます。いくつか思うものを挙げてみましょう。

・同じ価値観の中で暮らせ、国内ですべての生活が完結するシステムが完成している

・教養レベルが高い

・誰でも適度な仕事に就ける

・治安が良い

 

 これらが代表的に感じることです。すなわち日本を出る必要がないということ。

 これは世界的に見れば、ある意味大変幸せな社会であることを実感します。特に「誰でも適度な仕事に就ける」というのは重要で、アメリカにおいては「出来る人間か出来ない人間か」という極端な評価になることが多いのです。日本は精神的にも非常に楽であると言えるでしょう。これが続けば、それに越したことはないと思いますが、この日本の良さが、今後の世界との競争を考えるときに大きな問題になっているとも思えるのです。

 

 暮らしてみるとわかりますが、アメリカ、特にカリフォルニアなどは比較的治安は良いのですが、日本の治安が世界のどの都市より「良過ぎる」ので、日本人はそれがスタンダードだと思い込んでいます。

 これに代表されるように、日本人の問題点は「世界のスタンダードを知らない」ということだと思います。日本は先に書いたように、「国内で生活が比較的平等に完結する」システムになっています。けれどこれが、これからも続くとは思えないのです。

 

 今、アメリカから見て日本の優位性はアニメ、食事の美味しさ、ホスピタリティー(接客)くらいなのではないでしょうか。

 これは決してオーバーではなく実感です。一般的なアメリカ人はまだ「日本人は賢くて、清潔で、すごい国」と思っている人は多いようですが、先端的な人々の日本評価は決して高くないように感じます。

 特に今まで、アメリカのすぐ横にいて経済成長を遂げてきた日本は、すでに中国に抜かれた時点でグローバルな環境にさらされていますが、当の日本人はまだそれに気が付いていないのではないでしょうか。日本の学生なら尚更でしょう。

 

 学生の立場ですが、アメリカから日本を眺めただけでも、日本の危機管理の甘さが気になります。これは率直に怖いことだと思えます。

  日本を離れ、外国から冷静に日本を見られたことは大きな体験で、収穫だったと思っています。

 

 今後も気づいたことを発信してみたいと思います。またその時には宜しくお願いします。(2021年学報10月号掲載)