先日、「食卓から梅干しがなくなる!?」というニュースが流れました。これは梅干しに限らず、「漬物」全般の生産に及ぶような法律の改正があったからです。漬物製造は、食品衛生法の改正により、今までの届け出制から、これからは許可制になったことが原因のようです。そしてその改正内容は国際的衛生管理方式に準拠し、相当厳しいものになったようで、小規模な生産者や家庭的な環境での生産は、ほぼ不可能になってしまいました。地方のローカル食文化が国際基準に当てはめられてしましました。
それではその法改正のきっかけは何だったのでしょうか。それは2012年に札幌市で起きた食中毒にあるようです。
何か一つ問題が起きるとその再発防止をするために法律や条例が厳しくなるのは今に始まったことではありません。
建物の解体は都市を更新してゆくために必要なことですが、これには産業廃棄物の発生がつきものです。個人の家でも同じことが言えますが、現在、この廃棄物処理には大変な事務的労力がかかっています。マニフェストです。これは1990年に導入され、1998年にはすべての業者に義務化されました。
この原因は何かというと、当時、不法投棄が社会問題になっていたからでした。こちらも一部の業者の行いにより、ほぼ大多数を占める優良な業者にしわ寄せが来ます。
そして法律や条例がどんどん厳しくなり、経済活動や創意工夫が停滞して行くことになります。
これには国民性も大きく関わっているようです。
例えば「車検」。日本では「自動車検査登録制度」と言いますが、ご承知の通り、車を所有すれば2~3年に一度は必ずこの検査を受けなければいけない仕組みになっています。この検査の最も重要な点は「徴税」です。車検時には必ず納税が確認されます。もし自動車税が納税されていなければ車検を通すことは出来なくなり、車には乗れません。
そして安全点検も同時に行われます。しかしながら、国は車検に通った車の故障には何の責任も負ってくれません。管理をするだけなのです。
では自動車大国アメリカはどうでしょう。各州によって法律が違う国ですので、それぞれ定めはありますが、基本的には車検はありません。国民性による制度の違いでしょう。
日本は管理主義的(お上意識)志向が強く、欧米においては自己責任に重きが置かれる傾向です。どちらが良いかどうかは別として権利意識の違いは歴然としています。
梅干しのお話に戻りましょう。
基本的に日本は「お上の管理意識」が強い国といえます。国民もそれに慣れているために、あまり問題意識を持ちません。しかしながらLGBTQやハラスメントなどに代表される社会通念が新しい時代に入りつつある今、こんな身近な話題からいろいろ考えてみることも「視野を広げる」のに良い機会かもしれません。
間違いなく、今回の食品衛生法の改正で市場に出回る漬物の種類は減ることでしょう。大手の設備投資が出来る会社しか生き残れなくなります。
しかし反面、漬物は日本の伝統的保存食であり、本来は各家庭で手作りするのが一般的でした。ですから食中毒を避けるために販売は大手だけにすることが最善策か、法律・条例はあまり細かくせずに罰則の強化に向かうほうが良いか、家庭での伝統製法を喚起することになるのか、個性的漬物の衰退か……。
この「梅干し問題」一つをとってもいろいろ考えることが出来ます。
そして皆様も確定申告で悩まされたであろう「インボイス制度」。
一部の免税事業者を修正せずに、その他多くの企業に負担を迫る制度の導入。
取得義務のない「マイナンバーカード」に、生活に必須の健康保険証を紐づけ、保険証を廃止し、そこから生じる矛盾のために新たな資格証明書を発行するという愚行。
反面、急いで議論されるのは、またもや「ザル法」とも言えるような政治資金規正法……。
別に、国に対して不平を言っているのではなく、かくも社会には考えるネタがたくさんあると言うことです。
身近な社会を考えるだけで、気づかなかったいろいろなものが見えてくるのではないでしょうか。
社会には、ちょっと視点を変えるだけで「面白い」ことが沢山あるのです。