2024年は内外で大きな選挙が数多くありました。1月の台湾総統選挙に始まり、3月にはロシア大統領選。韓国、インド、EUでは議会総選挙。インドネシア、メキシコでの大統領選……。とりわけ私たちの関心の高いものは、国内では新首相の信任を問うべく行われた衆議院議員選挙であり、国外ではアメリカ大統領選でしょう。
「選挙」というと、多くの国民にはあまり関心を持たれない状況であり、「政治家なんて誰でも同じでしょ!」という感覚ではありますが、基本的に私たちに大いに関わる法律を決めるのは彼らであり、国の安全を左右する外交を担うのも彼らですから、本質的には「無関心」ではいられない大事な事柄です。
日本と違い、アメリカの大統領選挙は大いに盛り上がります。これは大統領を直接選挙で選ぶという選挙制度の違いも関係するので、これは「民度」と言うより制度の違いでしょう。また選挙に対するお金のかけ方も大違いで、まさにエンターテイメントの様相です。
こんな違いはあるにせよ日本の選挙は比較的地味と言えるでしょう。そして国民が選挙に関心を持ちにくいのは、常に付きまとう「政治家の不正」「政治とカネの問題」「誰がやっても同じという諦め感」などがあるでしょう。
エンターテイメント化はしなくても、政治家にはもう少し、国民が目を向けたくなるような論戦をして欲しいものです。
そんな中で行われた昨年末の衆議院議員選挙では近年稀に見る結果が出ました。それは2009年以来、15年ぶりに「どの政党も過半数を取れない」という状況です。
ここに日本人の「バランス感覚」を見ることが出来ます。長年続いた結果としての、自民党政権の甘えの体質に嫌気がさし、何とか「国民の顔を見て政治をして欲しい」という気持ちが表れています。しかしながら、過去に政権を取りながら大失敗を犯した民主党政権の流れをくむ立憲民主党では全面的な信頼がおけないというバランス感覚の結果と言えるでしょう。早速臨時国会においては躍進した国民民主党の意向を汲み、さまざまな税制が検討されるようです。一つひとつの政策には専門的な問題点や改善点が多数あるとは言え、少なくとも国民(特定政党の熱烈な支持者も勿論国民ですが、「支持政党なし」が最も多い日本の情勢を鑑みての意)の声を少しは聞く姿勢に転じたことと、
政権与党のご都合主義も大いに見え、野党の反省のなさも良く見えたことが今回の選挙の良かった点ではないでしょうか。まさに日本人の「国民性」的バランス感覚が表れた選挙でした。
転じてアメリカ大統領選に目を向けると、ここにも国民性の違いを見ることができます。
二大政党制が定着しているアメリカにおいては、選挙は右か左かの選択となります。ですから政策も大統領によって大きく変わってしまい、これが世界を翻弄する原因ともなっています。今回もリベラルからアメリカ・ファーストを唱える政権へと大きな振り幅となりました。それでも、アメリカ国民にも迷いが生じているようです。
今までは大体二期8年の任期を保ってきたアメリカですが、ここのところは一期ごとにリーダーが変わっています。また「圧倒的勝利」を得ることが難しくもなっているようで、今回メディアでは「トランプ大統領の圧勝」とされていますが、得票率において両者は「微差」でしかありません。
アメリカ国民も迷っているのでしょう。「半数近くの国民が支持していない政治」。これが現在の「民主主義」の問題点でもあり、政治家はもっと考えるべきだと思います。
日本に話を戻しますと、バランス感覚が働いたことは良い点ですが、こうなると大切になってくるのは「国民側の見識」です。政権が国民の方を向いたのは良いのですが、こうなると陥りやすいことは「国民側からのオネダリ」=「大衆迎合政治」に成り兼ねないという点。バラマキによって国が滅びるのでは本末転倒です。ここまでは良いバランス感覚が働いた日本ですから、次は国民の真価が問われるということをしっかりと意識する必要があるのです。
当面、政治から目が離せません。